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運を科学してみるということ(前編)


運が大事、というのはPE投資に限った話ではなく、筆者の実感としてはビジネス界の普遍の真理ではないかと思っています。

 

筆者は仕事柄、成功した経営者と接する機会には恵まれていたと思います。元来ビジネスオタクなので、成功したビジネスモデルの要因を分析するのも好きでしたが、ファウンダーの成功に至るまでのクロニクルにも関心があり、よくその手の質問をしたものです。そんな成功者の自分史を総合すると、結局は「運が良かった」という言葉に尽きるような気がしています。

 

当然謙遜もあるのでしょうが、第三者視点で俯瞰しても、今目の前にいる成功者は最も優秀だったからその地位にあるわけではなく、個人の能力以外の複雑な因果が絡み合ってその結果はもたらされていると感じざるを得ず、やはり事実としては、運の要素は無視できないものだと言えるように思います。

 

そう書くと、努力や挑戦が無駄なのか、と誤解される向きもありそうですが、筆者の言う運というのは努力の先にある概念なので、「ボーっとしてたら宝くじに当たった」というのとは、違う文脈の話とご理解頂ければと思います。

 

言うなれば、人生とは棚から落ちてくるぼた餅を拾うゲームです。ですが、皿を持ってなければ餅は地に落ち砂にまみれますし、箸を持っていなければ餅を口にすることはできません。そういう意味で、いつ・どこから落ちてくるかは分からないぼた餅に対し、全身全霊をかけて準備をすることは、決して無駄ではなく、(報われないかもしれないだけで)、必要な時間の使い方だとは思います。

 

いつもに増して抽象的な話ではありますが、一方で、ぼた餅を得る可能性を上げるには、いくつかロジカルな取り組みも可能だと思っているので、その中から一部を厳選してご紹介したいと思います。

 

 

第一法則:運とは逆張りである

 

まず、非常にシンプルなことですが、落ちてくる餅の数が多く、下で待ってる人が少ない棚の下を確保することが大事です。誠に月並みですが、ブルーオーシャン戦略ということです。但しこれが簡単でないのは、「棚の中の餅の数は未知である」、ということによるのでしょう。現実に直面している状況は、“餅の数がある程度予想できるちょっとだけ引き戸が空いてる棚(A)”と、“全体の大きさが見えているが引き戸が空いていない棚(B)”、の両方がありどちらの下で皿を構えておくべきか、ということかと思います。

 

ここで、行動経済学の根幹ともいえる「プロスペクト理論」を元に検討してみます。

 

【質問1:あなたの目の前に、以下の二つの選択肢が提示されたものとする。

選択肢A: 100万円が無条件で手に入る。

選択肢B: コインを投げ、表が出たら200万円が手に入るが、裏が出たら何も手に入らない。

 


【質問2:あなたは200万円の負債を抱えているものとする。そのとき、同様に以下の二つの選択肢が提示されたものとする。

選択肢A:無条件で負債が100万円減額され、負債総額が100万円となる。

選択肢B:コインを投げ、表が出たら支払いが全額免除されるが、裏が出たら負債総額は変わらない。

 


質問1は、どちらの選択肢も手に入る金額の期待値は100万円と同額です。にもかかわらず、一般的には、堅実性の高い「選択肢A」を選ぶ人の方が圧倒的に多いとされています。

 

質問2も両者の期待値は100万円と同額です。安易に考えれば、質問1で「選択肢A」を選んだ人ならば、質問2でも堅実的な「選択肢A」を選ぶだろうと推測されますが、面白いことに、質問1で「選択肢A」を選んだほぼすべての者が、質問2ではギャンブル性の高い「選択肢B」を選ぶことが実証されているのです。

 


この一連の結果が意味することは、人間は目の前に利益があると、利益が手に入らないというリスクの回避を優先(Risk Aversion)し、損失を目の前にすると、損失そのものを回避しようとする傾向(Loss Aversion)があるということです。

 

この行動経済学の一般即に従えば、世界が上手く回っているとき一般的に優秀と考えられる人々(=有形・無形の既得権を持つエリート)が多く皿を構えているのは、(A)の棚であり、この条件を所与とすると、比較の問題で相対的に(B)の棚は常に有利になるという推測が成り立ちます。

 

逆に、例えばリーマンショックみたいなレジームチェンジが起こり、既得権エリート層が損失を抱えているような時期は、(A)の棚の下で粛々と餅を待つ方が結果的には餅をゲットする順番は早くなったりするでしょう。

 

改めて考えると、筆者の知る“運良く”成功した人々は、概ね第一法則には当てはまっているように思います。またこれは起業や投資といった分野だけでなく、サラリーマンの出世レースという面でも、いわゆるレールに乗ったキャリアではない人が栄光を掴むケースでは当てはまっていることが多いように思います。

 

★★★


長くなりましたので、本エントリーはここで終わりにしますが、第一法則だけだと、必要ではあるが十分ではない状態です。しかしじっくりと考えてみれば、”運”という抽象的な概念にも、きちんと整理すれば一定の法則性はあるように思えてなりません。

実はまだ法則が何個あるのか、筆者自身にも確たるものがないのですが(笑)、少なくともあと2つぐらいはあるように思いますので、次回以降でご紹介してみますね。でも長くなったので今日のところはここまで。そんじゃねー。

 

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プロフィール

alphalifehacker

Author:alphalifehacker
  
腐ったこの国を買い叩くためハゲタカ阿修羅道に足を踏み入れた、元PEファンドのファンドマネージャー。更にその前は商社マン。

「お金を稼ぐことはいけないことでしょうか?」

いいえ、お金に罪はありません。ありません、が、数々のビジネスを経験してきた筆者のたどり着いた1つ答えは、富裕層と呼ばれるまでの財を成した人は例外なく”ワルい”ことをしているということ。

社会の裏側・お金と人間の悲喜こもごもをこの目で見てきた筆者の体験をもとに、エコノミック不良(ワル)と無辜な庶民はどこが違うのか、実生活に役立つ形に解釈し直し、発信して参ります。

このサイトに来ると少し賢く生きることができるかもしれない、アルファライフハッカーのブログです。

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