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PEファンドの正体③



さて前回の続きです。作業マシンに付加価値がないことは、そのままプライベートエクイティ投資の本質に迫るアジェンダでもありますが、その詳細をみていきましょう。




2.アソシエイト/アナリスト<後編>


ファンドマネージャーに求められるスキルを分解すると、ソーシング(案件発掘)/エグゼキューション(M&A実務)/PMI(投資後の各種バリューアップ)の3つですが、筆者の経験上、PEファンドの超過リターンの源泉は、“運”が4割、ソーシングが3割、PMIが2割で、残差にそれ以外の全ての要素が含まれる、という感じです。

運と実力のバランス的には麻雀に近いゲームで、間違っても囲碁・将棋ではない。CLSAがFeng Shui(風水)を投資に取り入れているのは有名ですが、成功しているファンドは大なり小なり運を味方につけているものです。


少し脱線しましたが、何が言いたいかというと、モデルを作ったり、ドキュメンテーション頑張ったり、といった”作業”のリターン貢献度なんて誤差だということです。しかし、若手の業界未経験者がソーシングやPMIといった、麻雀でいう筋読みとか壁読みとか、運以外で勝負したいときに必要なスキルを持ってることは極めて稀なので、必然的にポテンシャル採用にならざるを得ませんよね。この辺に、レジュメがインフレを起こしてしまう事情があるわけです。



逆に、業界経験者だと各領域でそれなりにアピールできる小話が出来るので、採用されるのは比較的容易な傾向があります。一度業界に入ってしまえば、「おいおい、本当にコイツで良いのかよ」みたいな同僚が有名ファンドに転出していく例は枚挙に暇がありません。育成という発想が端からない業界なので、経験者優遇の度合いは他業界より大きいと言えます。


もし、どうしてもPEに入りたいが、レジュメの見栄えはイマイチ...という方は、ブラフで良いので、自分がいかにツイているかを全力でアピールしてみるのは良いかもしれませんね。運をキチンと分析・科学まで出来ている候補者がいたら、僕なら間違いなく採用です。(運を科学するというトピックに関しては、非常に重要なことなので、改めて記事にしたいと思います。)


(追記)なお、業界を経験してしまいさえすれば良いので、銀行その他から出向でPEに潜り込むのは非常に有効な手段だと思います。筆者の知る限り、いわゆるFラン大卒から地銀に入行しPEに出向したというキャリアの方は実際にいますし、仮に運良く実績ができれば、どこかのファンドに転職ということも十分可能だと思います。



3.プリンシパル/ディレクター


さて、アソシが良いディールに恵まれると、このクラスに昇格します。これには、またぞろ”運”が絡んでくるんですが、作業(=プロセス)が評価される仕事ではないので、いかに業務を的確にこなそうと、結果がついて来ないと昇格もままならないというシビアな側面もあります。


特にアソシエイトクラスは、自分でディールを取ってくる道は事実上存在しないので、たまたま関わった案件が上手くいくか否かというコントロールの難しい要素に今後の人生のかなりの部分が掛かってきます。世間で騒がれる華やかな成功事例とは対象的に、優秀なんだけどディールには恵まれないという人も無視できない数に上ります。某ネット生保の名物社長も、リップルウッド時代にはディール決めたことない、と聞いたことがあります。


手を動かすのがアソシの仕事なら、社内外のヒトをうまく動かしてディール全体をマネージしていくことがプリンシパルの仕事ですが、このクラスに業界未経験者がいきなり採用されることはまずなく、一般読者向けとしては面白みのない話なのでサラッと流して終わりたいと思います。


先のファンドマネージャーのスキル3分類を職種別に当てはめると、アソシエイト(=エグゼキューション)、プリンシパル(=PMI)、パートナー(=ソーシング)、トップ(=運)といった具合に、職種が高くなるほど、よりリターンに直結するファクターに責任を負うというイメージを持つといいでしょう。



ここから先は順調に実績を重ねて、そのまま同じ会社でパートナーを目指しても良いんですが、近年は業界全体で上が詰まっていて、あたかも豊臣政権末期のような手柄を上げても与える土地がない状態に陥りつつあります。金余りでファンドレイズが容易な環境も相まって、論功行賞が十分に行き届かないと、独立して自らのファンドを立ち上げるという動きが最近目立つようになりました。ユニゾンの某氏とか、ベインの某氏とか、有名ファンドのトップ下クラスからスピンアウトが続出しているのは、まあそういうことです。




次回でこのトピックは一旦終了しようと思いますが、トリを飾るのはPEで最も重要なポジションである、パートナー/マネージングディレクターです。ファンドの良し悪しとは、つまるところ、代表者の良し悪しと言ってよく、謎に包まれたファンドトップのベールを明かして行ければと思います。そんじゃねー。

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プロフィール

alphalifehacker

Author:alphalifehacker
  
腐ったこの国を買い叩くためハゲタカ阿修羅道に足を踏み入れた、元PEファンドのファンドマネージャー。更にその前は商社マン。

「お金を稼ぐことはいけないことでしょうか?」

いいえ、お金に罪はありません。ありません、が、数々のビジネスを経験してきた筆者のたどり着いた1つ答えは、富裕層と呼ばれるまでの財を成した人は例外なく”ワルい”ことをしているということ。

社会の裏側・お金と人間の悲喜こもごもをこの目で見てきた筆者の体験をもとに、エコノミック不良(ワル)と無辜な庶民はどこが違うのか、実生活に役立つ形に解釈し直し、発信して参ります。

このサイトに来ると少し賢く生きることができるかもしれない、アルファライフハッカーのブログです。

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