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金融リテラシーのバカの壁=生命保険(後編)

では、前編のおさらいからです。まず生命保険の基本は、


金融リテラシーのバカの壁=生命保険(前編)
・死亡による将来収入喪失のヘッジが目的である
30歳前後で最もニーズが高く、年を重ねる度にニーズは減少する
・普通は50歳ぐらいからは生保をかける必要性は低い

 

で、これを前提とすると、30歳から50歳までの間、月額8,000円程度の掛け捨て保険に入っておけば、死亡による家計への悪影響はほぼ回避できると述べました。

とすると、一般家庭が支払っている平均月額3~4万円の生命保険料は、一体何のために支払っているのか、これが後編のメイントピックスとなります。

 

以下の図では、平均的家庭の保険料支払い統計をもとに、保険料に占める死亡保障のための費用が分かるように整理し直しました。

 

 生保のかけ方まとめ 注:保険料相当額は筆者試算(単位:円/月)


 

ご覧の通り、当初は保険料のうちほとんどが死亡保障とは関係ない部分が占めており、50代以降では、本来必要のない保険料が多くを占めています。



 

さて、保険外交員の常套句は、「これは掛け捨てではありません。貯蓄にもなるのです」なのですが、これが生命保険における最大のカラクリで、この図の結果を生む一番の立役者と言えます。 

 

結論から言うと、「掛け捨てでない保険」などというものはこの世に存在しません。解約返戻金や満期返戻金のある保険商品は、あたかも支払った保険料が戻ってくるかのような錯覚を与えていますが、実態は図で色分けした通り、「掛け捨て生命保険料」(濃い色の部分)と「それ以外」(薄い色の部分)が組み合わさっているだけです。

 

それでは保険料の大半を占める、「それ以外」は一体何なのでしょうか?返戻金と呼ばれるものの原資はこれです。「それ以外」だけを切り出して考えると、これは取りも直さず、「投資」なのです。保険とは特に関係のない、純粋な投資活動です。

 

 

投資というと株式投資をイメージする方が多いかもしれませんが、生命保険とセットになっている投資は、多くの場合は債権投資です。“保険会社自身が発行し一定の金利が付いた債権”(金融商品)を皆さんは買っています。

 

割合を見てお分かりの通り、保険会社が売りたいのは実は保険ではなく、この金融商品の方なのです。ここに旨味があり、債権を顧客に高く売りつける(=つまり、保険会社は安い実行金利で資金を調達できる)ことで、収益を取りにいくわけです。極端に言えば、金融商品とセットで売られるのは、保険である必要さえなく、携帯料金でも家賃でも何でも良い。「支払った携帯料金が満期で戻ってくるプラン」や「家賃が将来の自宅購入費用に充てられるプラン」でも、本質は同じことですから。

 

中国に「朝三暮四」という故事があります。飼っている猿に朝3つ、夕方4つの栃の実をくれてやると言うと、猿たちは少ないと怒り、朝4つ夕方3つにしてやると返すと丸く収まったという話ですが、筆者は、生保の商品設計は概ねこれに近い発想だと認識しています。

 



実際に保険を分析してみよう 


 

それでは、具体的に例をとって保険商品を分析してみたいと思います。

 

保険比較サイトの人気保険ランキング1位になっていた、明治安田生命「年金かけはし」という商品です。毎月2万円を35年かけ続けると、40年後に払い込み総額の約106が戻ってくるという商品で、積立額相当の死亡保険もついて来るという商品のようです。


年金かけはし 出所:明治安田生命「年金かけはし」パンフレット

 


まずは、5年毎に区切って、保険料相当額と投資相当額に分解してみましょう。保険料相当に関しては40歳ぐらいまでは申し訳程度ですが、払込総額(840万円)における保険料相当額は約50万円と試算されました。55歳~60歳の間、無料で約900万円分の死亡保障がついており、これには40万円弱のバリューがありますので、保険料相当はプラマイゼロ。概ね、純粋に月々2万円を積み立てるのと損得は変わらない商品といえそうです。

 


年金かけはしの分析 注:保険料相当額は筆者試算



さて、月々2万円積み立てて、40年後に106%になる投資の複利の利回り(IRR)は0.3%程度です。月々で積み立てるため、時間と金額を加重平均するとしても20年ぐらいの間800万円の資金を寝かせるのと同じ経済性になりますが、その利回りが0.3%というのをどう見るか、を各々判断されると良いでしょう。

(例えば、201811月現在の日本の20年国債の利回りは0.6%ぐらいです。この商品は一義的には明治安田生命への投資ですから、国債よりもクレジットリスクを負担しているはずです)

 

何より問題なのが、中途解約時の返戻金が、当初10年ぐらいは払込総額をかなり下回ることになる点で、被保険者が若い最初のうちは、死亡保険料相当分のコストはゼロに近いはずで本来払込額を下回る合理的な理由はなく、純粋な投資部分は投資した瞬間「負け」の状態に入ることです。この間のエコノミクスは、タンス預金の方がまだましなレベルです。

 

 

この商品が人気1位ということは、他の商品は推して知るべし、ということですが、ゼロ金利下の日本で、高利回りの商品を探すことはなかなか難しく、保険を活用した運用をめざすのであれば外資系保険会社が取扱っている商品の方が有利になるケースは多いように思います。

 


ちなみに、筆者が加入している運用型の保険は、プルデンシャル生命の外貨建て保険です。さすが、プロスポーツ選手や医師、経営者などの間では圧倒的なシェアを誇る会社だけあって、トップライフプランナーのコンサルティング能力は突出しています。ご興味ある読者の方には、TwitterDMからご連絡頂ければ担当者をご紹介致します。

 

 

★★★

 

 

生命保険に限りませんが、保険という商品は全般的に朝三暮四スキームが上手くワークしているのですが、この背景には、部品としては同じものでも組み合わせを変えることで商品化し、同じ条件で比較させないということを業界として徹底していることが一番大きいと思います。

 

保険外交員による対面販売という方式も、これを可能にする大きな要素で、対面でセールスでは、他社の商品を比較検討することも、その商品の保険料部分と債権部分を分けて計算するということも容易ではないため、ついつい比較検討せずに購入してしまうということになりがちです。

 

筆者は、ネット生保のさきがけ、ライフネット生命が各所での評判の割にうまく収益化に至っていない理由は、「透明性が高く比較可能な保険」で勝負してしまったせいだと思っています。賢い消費者にとっては非常に有難い商品になっているのですが、「コネてまぶして、オバちゃんで押し込む」ことこそが収益の源泉である商材で、バリュードライバーを自ら手放してしまっているため、収益性の面で苦戦を強いられているのでしょう。

 


このように保険に関しては、商品そのものよりも販売手法の方にマーケティングのエッセンスが詰まっていて、非常に興味深い分析対象なのです。


保険が売れれば何でも売れる、売ればわかるさ迷わず売れよ。


そんじゃねー。



 

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プロフィール

alphalifehacker

Author:alphalifehacker
  
腐ったこの国を買い叩くためハゲタカ阿修羅道に足を踏み入れた、元PEファンドのファンドマネージャー。更にその前は商社マン。

「お金を稼ぐことはいけないことでしょうか?」

いいえ、お金に罪はありません。ありません、が、数々のビジネスを経験してきた筆者のたどり着いた1つ答えは、富裕層と呼ばれるまでの財を成した人は例外なく”ワルい”ことをしているということ。

社会の裏側・お金と人間の悲喜こもごもをこの目で見てきた筆者の体験をもとに、エコノミック不良(ワル)と無辜な庶民はどこが違うのか、実生活に役立つ形に解釈し直し、発信して参ります。

このサイトに来ると少し賢く生きることができるかもしれない、アルファライフハッカーのブログです。

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