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金融リテラシーのバカの壁=生命保険(前編)

前回、金融リテラシーについて総論的な概念をお示ししたところですが、各論としての金融リテラシーの、“バカの壁”、というか直感を理性で乗り越えられるかのリトマス試験紙としては、やはり保険が一番面白いトピックスなのではと思います。

 

筆者からすると何でこんなに需要があるのか信じがたいのですが、とにかく皆さん生命保険が大好きなんですよね。そのおかげか、日本では生保だけで実に40兆円もの市場規模があり、これは不動産業にほぼ匹敵するぐらいの水準となっています。

不動産支出はワンタイムで、保険は定常的支出という違いがありますが、どちらも国内で完結する商品で、これが同じぐらいの市場規模ということは、ざっくり言うと一生で使う金額が家と保険でほぼ同じということです。

逆に言うと、もし保険にムダなお金をかけなければ、家がもう1つ買えるのです。

 

市場マップ (参考:市場規模マップ)

 

余談ですが、不動産も保険もツーブロックゴリラの闊歩する業界として有名ですが、市場規模がほぼ同じというのは、なるほどと妙に納得してしまいました(笑)。



さて、生保に関するお金の話に関して、以下のサイトで面白いデータを見つけました。

http://www.hoken-mammoth.jp/knowledge/toukei/c03.php

これによると、一般的な家庭では、月額34万円、年間だと50万円弱を生命保険料に投じているようです。

積もり積もれば家が買えるほどのお金をかけて、皆さんは一体何のリスクヘッジしているのでしょうか?

 

これが、保険における金融リテラシーの第一のポイントです。

 

 

生命保険でヘッジすべきは「将来の収入」


 

同じサイトに年齢別にいくらの生命保険をかけているかのデータもあります。

http://www.hoken-mammoth.jp/knowledge/toukei/c01.php


 

まず生命保険とはヘッジ取引ですから、被保険者が不慮の死を遂げたときに、何が失われ何を補填すべきなのか、ここを思考の出発点にしましょう。

 

家計において生命保険でヘッジすべきは、「あなたが生きていれば得られたであろう将来の収入」(の現在価値)が最大値で、既に手元に資産があれば、それを控除した額で十分になります。例えば、サラリーマンの生涯年収が2億円で40年勤務するとして、期間の平均年収は約500万円、税金・社会保険で20%引かれるので手取りが約400万円/年です。割引率を1%とすると、その現在価値は・・・

 

 

計算できますか?

(エクセルで、「=PV1%、40-4)」と打ち込んで下さい。単位は百万円)

 

 

さて、これで得られた数字が約130百万円。これが保険でヘッジすべき最大値で、年をとればそれだけ将来の収入は減りますから、下図のように年齢と共に必要保険金額は減っていきます。そして、独身であればそもそも保険をかける必要もなく、家計に資産が十分あれば保険がなくても問題ありません。30歳前後で結婚という一般的なライフスタイルを想定すると独身の20代とリッチになった50代以降では生命保険をかける必然性は乏しく、30歳から50歳までの20年間ぐらいに対して、ヘッジをかけておけば十分と言えます。

 

保険金理論値 

 

少し脱線しますが、家計において、若くして大黒柱が死んでしまうと、現在価値にして1億円ぐらいが吹っ飛んでしまうのです。片親家庭の貧困率が高いのはさもありなんですが、死別は保険でヘッジできるリスクなので、実はそこまで脅威ではありません。本当に怖いのは、ヘッジ手段がないうえに、発生確率がケタ違いな「離婚」なんですよね。離婚で取れる慰謝料は実現ベースの財産で、将来価値についてはフックがかかりません(一応、養育費があるが回収可能性は著しく低い)から、若くして離婚したときの損害は実は億単位にのぼります。家計における最大のリスクが離婚だということは、意外と意識されていないように思います。

 


それでは、先ほどの生命保険金額と重ね合わせてみましょう。ご覧の通り、一般的な家庭では、最も保険をかけておくべき30歳-50歳は一貫してヘッジ不足であるにも関わらず、保険などかける必要のない老齢期にはオーバーヘッジとなっています。

 

理論値と実際支払額 

 

これの意味するところを金融的に理解すると、ヘッジに過不足があるという状態は、即ち投機的なポジションを取っているということです。つまり、30歳-50歳の間は自分が死なない方に大きくベットし、それ以降は死ぬ方に大きく賭けているということです。そもそも安定を求めて保険をかけたはずが、意図せず大きな博打を打っているというのが、保険のかけ方から見えてくる実態なのです。

 

 

さて、ここまで読んだ働き盛りの読者から、「保険額が全然不足しているということは、更に保険料を上げないといけないのか?」、「今でもキツイのに保険料5倍も上げるなんて!」という声が聞こえてきそうですが、そんなことはありません。

 

 

簡易的に、30歳から40歳までの10年間に80百万円、同じく40歳から50歳までに40百万円の保険をかけた場合のコストを試算してみましょう。

 

保険料比較 出所:https://hoken.kakaku.com/insurance/

 


30代では保険金10百万円あたり、月額1,000円程度で保険はかかりますので、80百万円に対しては、月額8,000円程度です。40代になると死亡率が上昇するため、10百万円あたり月額2,000円に上昇しますが、必要な保険金額は半分の40百万円に減っているので、結果的に月額8,000円程度に収まり変わりません。

 

驚くべきことに、受取保険金額を激増させたにも関わらず、それぞれの年代が現在支払っている保険料(月額3〜4万円)の半分以下になるのです。

 

 

ちなみに、これが50代になると、10百万円あたり月額5,000円になり、60代では月額10,000円まで跳ね上がりますので、ヘッジする必要のないリスクに対して、割高な保険料、つまりは高い参加料を払って、自分が死ぬ方にベットする博打に参加することになります。(自分が死んだ方が儲かる人生って、何だか切ない・・・)

 

 

あれ?不思議に思いませんか?それじゃあ今まで払っていた必要以上の生命保険料は一体どこに消えているのでしょう?それが、保険のカラクリであり、金融リテラシーの最大のカギとなるのですが、そちらは少々複雑なため、後編に譲りたいと思います。

 

 

そんじゃねー。




 

金融リテラシーのバカの壁=生命保険(後編)

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プロフィール

alphalifehacker

Author:alphalifehacker
  
腐ったこの国を買い叩くためハゲタカ阿修羅道に足を踏み入れた、元PEファンドのファンドマネージャー。更にその前は商社マン。

「お金を稼ぐことはいけないことでしょうか?」

いいえ、お金に罪はありません。ありません、が、数々のビジネスを経験してきた筆者のたどり着いた1つ答えは、富裕層と呼ばれるまでの財を成した人は例外なく”ワルい”ことをしているということ。

社会の裏側・お金と人間の悲喜こもごもをこの目で見てきた筆者の体験をもとに、エコノミック不良(ワル)と無辜な庶民はどこが違うのか、実生活に役立つ形に解釈し直し、発信して参ります。

このサイトに来ると少し賢く生きることができるかもしれない、アルファライフハッカーのブログです。

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