記事一覧

政治とカネ ~日本征服に必要な金額~

さて、今日は少し筆者の本業に関わるお話を。

「政治とカネ」と聞くと多くの方は、モリカケ問題のような、自民党の偉い政治家と悪い経営者が何か裏でやっているイメージを持たれるかもしれません。まあ昭和の自民党なら少なからずそういうステレオタイプな側面はあったでしょうが、今ではもう絶滅危惧種です。


ところで、政治家は何のためにカネが必要なのかというと、筆者の知る限り私腹を肥やすためという方は極めて少数だと思います(だいたい儲かる仕事じゃないし、儲けたいならもっと違うことした方が遥かに効率は良い)。

では何のためかというと、端的に言うと、子分を養うためなんです。政治とは多数決の世界ですので、政党でも派閥でも、意見を通し理想を実現させるためには、頭数となる国会議員が束で必要になります。

ところが、国会議員はいわば個人事業主ですので、原則雀の涙ほどの議員報酬(2,000万円程度)で、自身の生活費だけでなく事務所のスタッフの人件費なども賄っていく必要があります。暑中見舞いと年賀状を送るだけでも数百万円の経費が飛んでいく仕事ですから、このぐらいの収入じゃあまるで足りません。また、落選して浪人すると、収入が無くなったまま事務所を維持する必要がありますので、もう想像するだけで恐ろしいですね。


一般的に国会議員は金銭的に困窮していることから、一部の資金力豊富な親分(派閥の領袖)が子分の面倒を見る(=つまり権力を持つ)というのが、この業界の普遍的な姿となります。政策理念も大切ですが、現実は割と世知辛いのです。誤解を恐れず言うと、カネを集められる政治家が一流の政治家で、ファンドの仕事とも似ている側面があります。


ちなみに、こういう政治資金の流れは開示が義務付けられているので、調べようと思えば誰でもアクセスできる情報なのですが、上場企業の決算などと違って、長くアクセシビリティが最悪なことに加え、真面目に調べる数字のプロもほぼいませんでした。

そこに課題を見出していると思われるNPOが、ラポールジャパンというサイトで政治資金関係情報をデータベース化していましたので、これを使って政治とカネの流れを解き明かしてみましょう。発起人にはグロービスの堀義人氏やマネックスの松本大氏などNews Picksの常連にいそうな面々が見られ、後援企業にはGoogleも名を連ねるなど、なかなかの陣容なのですが、2016年以降更新が止まっている模様で、もしかしたら、もう資金が尽きてしまっているのかもしれません。。。(この辺りからも、政治は儲からないということの一片がうかがい知れると思います。)


1)政治の資金調達構造


政治家の収入源は大きく分けて、

①政党に入る資金
②政治家個人に入る資金

の2つがあります。政党の最も重要な機能は、①を通じて得た資金を、所属する議員に対して供給することで、実は大きな集金・配分マシン(いわば間接金融としての銀行)のようなものなのです。

多くの政治家は②の力(つまり、市場からの直接調達力)に乏しいため、政党に所属し、①で供給される資金に依存して事業運営を行っています。いわば、銀行に頭の上がらない中小零細企業のようなものです。

そしてもちろん、政党としての集金機能が大きければ、その分有利な戦いができます。



2)政党の資金源


それでは、各党の資金調達状況を確認していきましょう。2015年度のデータなので、やや古いですが、内訳構成は今でも変わっていないと思います。

まず、最も資金力の豊富な政党はどこだと思いますか?普通に考えれば自民党でしょう。では2位は?野党第一党(当時)の民主党でしょうか?それとも勢いのある維新の党でしょうか?


答えは、こちら。

>各党の年間収入額
政治資金ランキング 出所:ラポールジャパンHP


自民党の年間収入(企業で言うところ売上高)は、約257億円で国会議員1人当たり約6,300万円です。何と2位は共産党で、約238億円と肉薄しているだけでなく、国会議員1人当たり7億4,400万円にも及んでおり、裕福度で言えば圧倒的に共産党です。更に3位には公明党がランクインしており、民主党は4位でやっと顔を出す程度です。


えぇ、共産党すごい・・・。一体どうやったらそんなに資金が集まるんでしょう。


政治資金内訳 



資金源の内訳は次の通りです。青い部分が政党交付金(国から政党に支給される補助金のようなもの)で、自民党や民主党はこれがほとんどを占めています。オレンジの寄付や黄色の党会費などは、自民党においても微々たるもので補助金頼みの私立大学と似たような構造です。


一方、共産党、公明党、社民党では赤い部分の事業収入が最大の収益源となっています。共産党に至っては、政党交付金は違憲という信念があるらしく、有史以来受け取りを拒否しているそうです。かっけぇ・・・


政党なのに事業とは奇異な感じですが、各党共に機関紙の発行事業がこのほとんどを占めており、『しんぶん赤旗』や『公明新聞』からの収入が、数十~数百億円の規模に及んでいるのです。
なお余談ですが、この表には載っていない幸福実現党は、事業収入の規模が20億円程度といったところで、社民党よりも潜在力のある政党と言えます。


筆者はこれらの新聞を読んだことはないですが、普通に考えて新聞事業がこれだけの収益を生むのは不可解な現象で、事実上は寄付行為のような購読が多数行われているのでしょう。政党への寄付であれば、開示義務があるうえに寄付総額に制限(同一の団体に対しては年間150万円程度まで)があるため、パワープレイで集めるのは困難ですが、機関紙購読であればこれより目立ちにくく、一体誰が資金を提供しているのか、国民は注視しておく必要がありますね。

政治とカネというテーマで言えば、モリカケ問題などより、よっぽどこちらの方が不透明に思えます(個人の感想です)。


3)政治家の資金源


では次に、政治家の資金源を分析してみましょう。1で述べたように、政治家には政党からのミルク補給に依存しているサラリーマン議員と、直接調達が可能なスター議員の2種類がいるため、各政治家の年間収入と、そのうちに占める政党支給分の割合でプロットしてみました。(例によって2015年度のデータ。早くラポールジャパンの更新が待たれる)

政治家プロット1 


政治家が直接調達する資金は、大政党一党分にも及びます。そして大多数は自民党系議員だと思われますので、自民党は党の力というより、個の力で勝負する政党ということだと思います。

しかし、(時系列データがないので正確な数字は不明ながら)、直接調達の金額はここ20年ぐらいで激減していると言われており、趨勢としては党に頼らざるを得ないサラリーマン議員の比率が増しているようです。安倍一強政治、官邸主導の政治が行われる背景には、このような資金調達状況の変化が一因だと推察されます。

そして、この図を見ると、収入総額が50百万円を超え/政党支給比率が20%を切る辺りで曲線の微分係数が大きく変化しており、この周辺に有力政治家とそれ以外の分水嶺があるように見受けられます。

ちなみに、政治家個人がどうやって調達するかと言うと、寄付もありますが、ここでも事業の割合がかなりの部分を占めます。政党と違って、政治家個人の事業収入の場合は、機関紙ではなく、パーティー券の販売が最もオーソドックスな手法となっております。とはいえ、太いスポンサーを持っている政治家でも、せいぜい数千万円程度の規模なので、共産党の謎の力には遠く及びません。

それでは参考まで、収入が1億円を超えるトップ政治家のランキングと共にまとめてみました。

政治家プロット2 


首相や閣僚経験者がズラリと並んでいますね。政治家として上に行くためには、民衆の支持に加え、やはりお金も必要ということでしょう。

ちなみに、現在安倍総理と自民党総裁の座を争っている石破茂氏は73百万円で119位、次世代ホープ小泉進次郎氏は僅差の108位で、赤枠内の中位に位置しています。首相を目指すなら、もう一段、資金調達力の積み上げが必要、といったところでしょうか。




★★★

政治力と資金力の関係がお分かり頂けたでしょうか?
さて、このデータを見る限り、カネだけの戦いであれば、ざっと年間300億円のバジェットを持って与党内で10年ぐらい勢力拡大に努めれば、自民党総裁戦も勝てそうな気がするので、日本で権力を掌握するために必要な資金と時間は、10年/3,000億円というところでしょうか。

さすがにそこまでは無理でも、クラウドファンディングやICOなど、テック領域で資金調達の概念が変わりつつある昨今。そう遠くない将来スマート調達に成功したプレーヤーが、キャスティングボートを握る現在の公明党ポジションぐらいに成長してくる可能性は、無きにしもあらずといったところ。

一人ぐらい、「総理大臣にオレはなる」とか言って300億どーん!みたいな逸材が出てきたら、日本も変わっていくんじゃないでしょうか。(逆の見方をすると、海外の諜報機関からしてみれば、300億円/年でいいなら安いような気もする)

そんじゃねー。

スポンサードリンク

↓Twitterでフォロー↓

プロフィール

alphalifehacker

Author:alphalifehacker
  
腐ったこの国を買い叩くためハゲタカ阿修羅道に足を踏み入れた、元PEファンドのファンドマネージャー。更にその前は商社マン。

「お金を稼ぐことはいけないことでしょうか?」

いいえ、お金に罪はありません。ありません、が、数々のビジネスを経験してきた筆者のたどり着いた1つ答えは、富裕層と呼ばれるまでの財を成した人は例外なく”ワルい”ことをしているということ。

社会の裏側・お金と人間の悲喜こもごもをこの目で見てきた筆者の体験をもとに、エコノミック不良(ワル)と無辜な庶民はどこが違うのか、実生活に役立つ形に解釈し直し、発信して参ります。

このサイトに来ると少し賢く生きることができるかもしれない、アルファライフハッカーのブログです。

Current Tweets

Amazon Link