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みんな大好き=学歴・資格論争

 金融系で転職の話題になると必ずついて回るのが、学歴・資格問題です。投資銀行やPEファンド、アセットマネジメントと言った高度金融専門職が将来にわたっても今の地位を維持できるかはともかく、少なくとも2018年時点においては、依然として職業としての報酬水準が世界最高レベルにあることは間違いないと思います。

 

そして、上記のような金融業に求職者が殺到する背景は極論すれば報酬以外にはなく、金融ギルドに入会すればエコノミックレントを獲得できるはずだ、という各々の思惑と打算があるのです。仕事の割に給料が安ければ、金融などというストレスフルな仕事に人が集まるはずがありません。(もちろん、死ぬほど金融が好きという方も中にはいるかもしれませんが、筆者の知る限り人生でそんな変人に遭遇したことはない)

 

更に、レントが発生する裏側には必ず参入障壁が存在します。金融業界の場合、それが学歴や資格で、それを持たない人の参入を困難にすることで、インナーサークルのメンバーがレントの恩恵を受けられるという構図になっているのです。

 



意識高い系と呼ばれる人達が陥りがちな間違いに、「スキルを高めることが重要」という幻想があります。スキル幻想があるので、グ〇―ビスに通って一流MBAと同じカリキュラムをお手軽にマスターすれば、何か道が開けるのではないかと考えてしまいます。

 

違います。全くゲームの構造が見えていません。少なくとも書類選考の段階で採用側が潜在的に意識しているのは、本質的なスキルではなく、あなたを採用することが参入障壁を強化することになり、自分達の優位性を更に高められるかどうかです。従って、レジュメが「こっち側」を示すアイコンかどうかが、この段階では決定的に重要なことだといえます。

 

簡単に手に入るモノではダメなのです。意味もなく難しければ難しいほど良く、学歴であれば学校が、職歴であれば職場が厳しいセレクションを行ってくれるモノほど価値があるといえます。

 

 

では、どんな学歴や資格が価値あるアイコンなのでしょうか。

 


まずは、支配的な市場におけるマジョリティであることが最も重要です。金融業界は、グローバル化が最も進んでいる業界の1つですので、日本だけで通用するようなアイコンの価値は相対的に低くなります。グローバルの文脈で知名度があること、これは必須というか前提条件となります。

 

次に、アイコンとはつまりブランドですから、ターゲットとなる市場で継続的なブランドマネジメントがなされているかも重要な論点だろうと思います。

 

上述の文脈で、過去に筆者の感覚を発信してみたところ、案の定というか様々な反響を頂戴しました。良い機会ですので、学歴・資格について簡単なデータに基づいて整理してみましょう。繰り返しになりますが、これは飽くまで書類審査(=入会資格)の判断に使うのみで、これを通過した後は本当に役に立つ人材かどうか、つまり職歴等がより重要になってくるとお考え下さい。


 

 

★★★

 

まずは知名度の比較のため、Harvard UniversityCFA InstituteKeio UniversityUSCPAの4つをGoogle検索してみた結果です。

 

検索比較 

 

もうね、Harvardの圧勝です。

Harvardのブランド力は金融業界のみに留まるものではないことから、当然といえば当然な結果になっていますが、Top Tier MBAの威力というのは金融業界でも相当に強力だといえそうです。

 

次点のCFAは、Keio UniversityUSCPAに比しては、34倍は知名度があるようです(慶応は日本語で検索しても大きく検索結果は変わらず)。日本ではほぼ無名なCFAですが、金融関係者以外が検索することはまずないワードであることを考えると、グローバル金融界では比較的名が通っているようですね。

 

そして、ここで最も注目すべきなのが、検索地域のバラつきです。


地域分布 


HarvardCFAはグローバル文脈のアイコンと言って差し支えない分布に見えますが、KeioUSCPAは日本と一部でしか通用しないアイコンだといえます。また、USCPAはなぜか日本人が異様に好きな国際資格だというのは面白い結果ですね(笑)。

 

 

次に、各資格のブランドマネジメントへの力の入れ具合を測定するため、それぞれに投入された広告宣伝費の水準を調べてみました。(USCPAは州によって異なるうえ、民間資格ではないので検討から除外)


各資格のブランドマネジメント力 

ご覧の通り、日本ローカルの資格とグローバル資格ではかなり、戦略的ブランドマネジメントの取り組みに違いがあることが分かります。これは単年決算から見たフローの差ですから、これが毎年続くとなると、ストックではかなり大きな差になっていくことが想像されます。

 

 

★★★

 

 

この手の論争においては、人間の本能的な行動として、自分の持っているカードを過大評価する傾向があります(行動経済学でいうところの、Endowment Bias)。しかし、このようなデータでしっかりと世界で起こっていることを把握することも、この世界を生き抜くためには必要な知恵かもしれません。

 

筆者はいずれの学歴・資格であっても本質的には意味のないものだと思っています。Harvardで学べることも、その気になれば書籍やE-ラーニングを活用すればキャッチアップすることは可能でしょう。知識だけなら今の世の中、ヤル気さえあれば世界中どこにいても高い水準を身に付けることは可能です。しかし、だからこそと言うべきか、レントを守る側は見えない参入障壁を設けて、知識だけでは勝てないゲームを仕掛けてくるのです。

 

今回はたまたま金融の話でしたが、レントの構造というのは、あらゆる資格産業が共通して持つ問題で、金融の場合はたまたまオーソリティが民間運営のものが多いため、ある程度自由競争による優勝劣敗となっていますね。

 

しかし、資格ビジネスは国家が絡んだときにその効用は最強になります。医師会や弁護士会が、専門性では本職に勝る無資格者がいたとしても絶対に彼らを容認しないのがその最たるもの。金融業界のレジュメセレクションも、本質的にはこれと変わない構造だと思いますが、批判をしてもしょうがない、そういうルールならレントを得るために粛々とその準備をするのが、市井の庶民に与えられた数少ないチャンスといえるでしょう。

 

事の善悪ではなく、やるもやらぬも自分次第ということでしょうか。

そんじゃねー。


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プロフィール

alphalifehacker

Author:alphalifehacker
  
腐ったこの国を買い叩くためハゲタカ阿修羅道に足を踏み入れた、元PEファンドのファンドマネージャー。更にその前は商社マン。

「お金を稼ぐことはいけないことでしょうか?」

いいえ、お金に罪はありません。ありません、が、数々のビジネスを経験してきた筆者のたどり着いた1つ答えは、富裕層と呼ばれるまでの財を成した人は例外なく”ワルい”ことをしているということ。

社会の裏側・お金と人間の悲喜こもごもをこの目で見てきた筆者の体験をもとに、エコノミック不良(ワル)と無辜な庶民はどこが違うのか、実生活に役立つ形に解釈し直し、発信して参ります。

このサイトに来ると少し賢く生きることができるかもしれない、アルファライフハッカーのブログです。

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