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頭の良い人ほど、頭は使わない。


先日Natureのこの記事をみて、自分が経験的に感じていたこととドンピシャだったので、脳科学については門外漢ながら、頭が良いとはどういうことかを独自の視点で考えてみたいと思います。

 

従来の研究では、頭の良い人ほど大きい脳を持っており、複雑に絡みあったニューロンによってロジカルな思考が形成されると考えられていたが、近年の研究では頭の良い人ほど、思考の際に脳があまり活動しておらず、ニューロンが“詰まっていない”ことが分かってきた。
(引用:筆者意訳)

 

知識を詰め込めばそれだけ新しい回路が形成され、脳の活動が活発になるというような説は一度は聞いたことがあるでしょう。筆者もそうだと思っていましたし、読書が推奨されることも、大学入試が暗記偏重なのも、インプットの量こそが知能を図るモノサシであると信じられてきたことの帰結と考えられます。

 

これについては、直感的には概ね異論のないところだと思いますが、特に社会に出てビジネスというフィルターを通してみると、この命題に対しては、無視できない数の反例が存在していることが、筆者が経験上感じていた違和感の原点です。

 

世の中には、「あの人は、東大卒なのに/元マッキンゼーなのに/弁護士なのに、仕事ができない」という実例が無数にあります。同時に、「Fラン卒なのに一代で数十億、数百億円規模のビジネスを作った」という成功者も相当数存在します。(統計をとったわけではないものの、極端な外れ値というような出現率ではない)

 

必ずしもビジネスを成功させた=知能が高い、というわけではない様にも思いますが、本当に頭の悪い人が運とアニマルスピリッツ“だけ”で成功するということは、一般的な競争環境の市場ではなかなか考えづらく、やはり人より頭が良かったのだろう、と考えざるを得ませんよね。

 

つまり、難しい試験で測る頭の良さは、ビジネスの文脈で定義されている頭の良さとは本質的に異なるものである可能性を示唆していて、偏差値というモノサシでしか勝敗が見えなかった学生時代にはなかなか可視化されなかった「何か」に関するヒントが、冒頭の研究結果に表れているのではないかと考えています。

 

 

★★★

 

 

抽象化とフレームワーク思考

 

 

冒頭の研究成果をベースに、筆者の知っている(ビジネス的な意味で)頭の良い人の特徴を表現すると、「抽象化」と「フレームワーク思考」ができる人ということになりそうです。

 

個人的に高学歴なのにザンネンな人(人格面の話じゃないよ)は持ち前の情報処理能力によって、全ての問題に総当たりで対応しているのではないかという疑いがあります。ハードの性能が良いため、幼少期から力技ごり押しで試験をパスするぐらいは何とかなったのでしょう。

 

これに対して、「抽象化」と「フレームワーク思考」は思考のプロセスを限定するテクニックです。なるべく無駄なことを考えないようにすることで、かえって「頭が良い」と思われるようになるのです。

 


 

抽象化すると思考プロセスを減らせられる

 


以前Twitterでこんなことをつぶやきましたが、

抽象化については、物事を要素分解したうえで、より広い範囲、より上位の概念に一般化する力のことです。

正面からみるとあまり共通点のないものでも、大きく捉えると同じものであると分かれば、色々調べなくても未来が予測可能になり、ビジネス的には大きな意味を持ちます。しかし、このテクニックを使わずにロジックを構築していくと、普通は途方もない情報量と論理の積み上げが必要になるので、限られた時間内では意味のあるアウトプットが出せないのではと感じています。

 

かつて、ピカピカの経歴のジュニアに規制が複雑な業界の市場調査をお願いしたことがあります。彼は、業界の歴史や規制関係などを一生懸命調べてくれて、この種の質問には何でも答えられるようになりました。ところが、「この市場は以前検討した、ある業界とよく似てるんだけど、どこだと思う?」のようなレイヤーをずらした質問をすると、途端にトンチンカンな答えが返ってきて、実に不思議に感じたことがあります。

 

今はNatureの記事をみて、目の前の問題を端から処理しても間に合ってきたため、なるべく考える回数を減らすという発想の思考体系が構築されて来なかったことが、上述の結果につながったのではないかと感じています。

 

 

フレームワークがあれば取捨選択が容易になる

 


同様に、フレームワーク思考も無駄なことを考えないためには、強力なツールになります。3Cでも4Pでも5WHでも、何でも良いのですが、モレなくダブりのないフレームワークが最初にあれば、あらゆる論点はこのマスの中のどれかに該当するので、それをマッピングしていくだけで、及第点のディスカッションになるのです。


あれこれ考える必要はありません。機械的に当てはめていくだけですから、非常にシンプルです。

 

フレームワークとは、キャッチーなネームが付いているものだけはありません。期限を考慮しながら各メンバーのタスクを表に落としていくというような作業も、言ってみれば時間×各人のタスクで作られた一種のフレームワークなのですが、これの整理なく議論を始めると、時間ばかりかかって意味あるタスクに落ちていないという事故になりがちです。

 

要は、フレームワークに基づいて議論をはじめると、あまり意味のない領域を不必要に掘っていくような時間の使い方を抑制できると同時に、ポイントとなるカテゴリはどの辺かということの当たりがつきやすくなるのです。優先順位をつけるには、まず物事を相対化する必要があり、そのためには、フレームワークで“くくる”技術が重要になってくるわけです。

 

このフレームワーク思考も、高学歴ユニバースの中でさえ、驚くほど身に付いていない人が多いように感じます。こんなこと、有名どころのコンサルタントであれば、息を吸うにも等しい基本動作だという思い込みがあったのですが、脳の容量が大きくニューロンが沢山あると、かえって思いついたことを全部やってしまい、無駄なことを考えてしまう傾向があるんじゃないかと思います。

 

かつてとある弁護士に、司法試験合格の極意を聞いたところ、


「司法試験というのは実務家登用試験で科挙ではない。実務家において最も重要なことは、知ってることを全部言うことではなく、“必要ないことを言わない”ことだ。従って、司法試験の答案は、不要なことまで論述しだすと落ちる」


と教わり目から鱗が落ちたことがありましたが、分野を問わずビジネスにおける頭の良さとは、無駄なことを排除して最速で答えを出すためのプロトコルを持てるかどうか、これに尽きるのだと思います。こういう思考をしているときは、確かに脳がフル稼働してる感覚はなく、ショートカットキーを使っているかのようなニュアンスを感じます。

 

★★★

 

 

Natureの記事は、脳の構造とIQの関係性については明らかにしているものの、それが先天的な才能なのか、後天的な努力で補い得るものであるかは触れていません。筆者の感覚では、意識して訓練さえすれば、思考をシンプルにすることは可能だと思いますし、特にハードに優れた高学歴人材であれば、問題なく習得できる類のものではないかという気はしています。

 

しかし、体系的に“思考の型”を習得するメソッドが開発されたと聞いたことがなく、意識して取り組んだ人は、そうでない人に比べて大きなアドバンテージが出せる領域なので、ここにチャンスがあるのではないでしょうか。

 

無駄なことを考えない。それを徹底するだけで、あなたもちょっとだけスマートに見られるようになるのかもよ。

そんじゃねー


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プロフィール

alphalifehacker

Author:alphalifehacker
  
腐ったこの国を買い叩くためハゲタカ阿修羅道に足を踏み入れた、元PEファンドのファンドマネージャー。更にその前は商社マン。

「お金を稼ぐことはいけないことでしょうか?」

いいえ、お金に罪はありません。ありません、が、数々のビジネスを経験してきた筆者のたどり着いた1つ答えは、富裕層と呼ばれるまでの財を成した人は例外なく”ワルい”ことをしているということ。

社会の裏側・お金と人間の悲喜こもごもをこの目で見てきた筆者の体験をもとに、エコノミック不良(ワル)と無辜な庶民はどこが違うのか、実生活に役立つ形に解釈し直し、発信して参ります。

このサイトに来ると少し賢く生きることができるかもしれない、アルファライフハッカーのブログです。

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