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しなやかに、したたかに、労働市場を生き抜くこと

今回は予定を変更して(何の予定だ)、この発言について深堀りしたいと思います。

 

 

老荘思想の基本概念に「無為自然」というものがあります。人は天に対してあまりにも無力なので、天を人に合わせようとするのではなく、天の流れに身を任せる生き方こそが自然で幸せな生き方である、ということなんでしょう。

 

では、天の流れとは何かといえば、転々流転、つまり絶えず“変動”を繰り返す現象を指すのだと思います。これに対し、天をコントロールしようとする行為、それを筆者は“固定”という概念だと考えています。

 

少し金融・ファイナンスをかじると、金融・経済は変動と固定が絶えず交換を繰り返す活動のことだと気づくかもしれません。(固定金利/変動金利、固定給与/変動給与、ヘッジ取引/投機取引、etc.

 

そして、本来変動に身を任せることが自然の摂理であるにも関わらず、人はとにかく“固定”が大好きです。ですが、これをやると必ずどこかに無理が生じます。

 

バブル経済が良い例でしょう。市場経済に任せておけば、金利上昇という形で自然と適正水準に調整される経済活動を、中央銀行が金利を低く“固定”することで、「過剰」が生まれ、「歪み」が溜まり、それがどこかの段階で必ずクラッシュします。中央のエリートが寄ってたかったところで、天を永遠とコントロールし続けることは、土台不可能な話なんです。

 

およそあらゆる世の不幸は、世界を固定化することで発生する

21世紀の投資家の言葉)

 

 

★★★

 

さて、我が国の労働市場では、特に“固定”が好まれてきた歴史的経緯があります。(年功的な)“定期”昇給、“終身”雇用、残業時間“規制”、“正”社員……もうこれでもかというくらいに“固定”があふれています。

 

ブラック企業や就活地獄、待機児童問題などの働くことに起因する不幸は、だいたいが固定化した労働市場の帰結です。正直、ここまで固定に固定を重ねると、1つ2つ火を消したところで、あちこちで別の火種が起こり、完全消火は絶望的な状況ではないかと思います。

 

まあ、そんな暗い気持ちを吹き飛ばすために、従来の伝統的な雇用慣行に加えて、変動的な働き方・働かせ方の選択肢が激しく増えた世界で、コンビニに仕事がどのように変化するかシミュレーションしてみたいと思います。

 

 

【バイトの前提】

ü  時間を固定せず、達成売上に応じて給与を決定

ü  それぞれが必要なお金は各人違うので、目標給与は各バイトが独自に設定

ü  バイトは目標売上を達成できればスグに帰れるが、達成できなければ帰れない

ü  やってみて割に合わないと思ったら、いつでも他の仕事に移れる

ü  他の職種も同じような勤務体系で、より少ない時間で(自分にとって)簡単に稼げる仕事を探すことができる

 

【店長(マネジメント)の前提】

l  店を何時間空けて良いし、商品の価格も自由に設定できる

l  バイトの採用、契約条件(時間帯毎の目標売上高とその報酬)も店長が設定

l  Σ(売上‐商品原価‐バイトに支払った報酬)=店長の利益

 

 

この結果何が起こるでしょうか?

 

1.金を生まない仕事・時間の削減

 

お昼時でレジに長蛇の列ができるような時間帯は、一瞬で売上目標に達するので、ラクショー!な仕事になりますが、逆に客のこない時間は何時間働いても金にならないので、バイトが集まらなくなります。それから、客の来ない店舗(日商の低い店舗)もバイトから敬遠されるようになるでしょう。

 

バイトが集まらない店舗や時間は、バイトへの成果報酬を引き上げるなど、実質的な賃上げが必要になりますが、そうすると、店舗収益は圧迫されますので、その時間・地域に店を出すことの是非がはっきりしてきます。(注:限界利益が赤字でなければ、客の減る時間も店を開けておくことは正当化できます)

 

バイト戦士は、1日当たりの手取りを最大化したければ、お昼の数時間コンビニで働いてサクッと報酬を得た後、昼過ぎからは別のコスパの良い職場(喫茶店など)に移動し、夜は居酒屋に顔を出して帰れば良いのです。結果的に、必要な時間に必要な数の人員が配分されるようになるはずです。

 

しかし、客が来ようが来まいが、レジに立ってさえいれば金がもらえるなら、たとえ非効率でもバイトはコンビニに居続けるでしょう。これによって、今一番バイトを求めている職場にバイトが供給されなくなり、人手不足が深刻化するのです。

 

 

 

2.商品価格の弾力化

 

時間や店舗に応じて、バイトの調達コストが変わってくるということは、儲からない時間や店舗は商品価格を調整する必要などが生じてきます。客の来ない時間に売上を増やすには、タイムセールで割引を実施するなどの数量効果、あるいは、深夜料金の導入などの単価効果のいずれかを検討する必要に迫られます。

 

また、長蛇の列ができる時間帯は、価格を引きあげて来店客数を抑制しても、利益が増えるならそのようなプライシングもあり得るでしょう。

 

店長は、毎日ダイナミックに経営判断を迫られることになり、リソースの配分をパズルのように考えながら、収益目標を目指すことになります。なかなかに大変になりますが、マネジメントの仕事というのは本来そういうものです。現場の兵隊に求められるスキル・資質とは良くも悪くも全く違うものなのです。(故に、報酬は高くなる)

 

バイト積分図 

 

★★★

 

“時給×決められた時間”でバイトの給与が決まり、“全国一律料金”という固定化された構造こそが、繁忙・閑散の差をコントロールするインセンティブを無くしてしまい、結果、無理な労働を発生させる原因になるのです。

 

ブラック企業・ブラック労働が発生する原因は、硬直化した労働市場と弾力的なプライシング機能が存在しないことが大きな原因と考えています。何でもそうですが、固定料金でいくら使っても値段が変わらなければ、人は徹底的に使い倒そうとしますよね?

 

しかしそれは、本来変動的でリスクのあるものを契約で固定化した(金融的に言うと変動と固定のスワップ取引)ことで生じた現象です。原理原則から言えば、固定の出し手(労働者)はプレミアムを求めるべきなのですが、(住宅ローン金利を考えると分かりやすい。普通は変動金利より、固定金利の方が高くなる)労働市場が硬直化していることで転職が容易ではなくなり、一部の雇用主に有利な環境なっていると考えらえます。

 

とはいえ、変動はリスクです。変動要素が増えると、考えることの量が爆発的に増加します。そして何より、人は考えることが嫌いなんです。色々考えなきゃいけないと面倒臭いから、「もう固定してくれるならそっちの方がいいやー」、とすぐ楽な方を選びます。

 

日々の意思決定を他人に委ねて、あんまり考えなくてよい道をみんなが好むようになった結果と考えれば、今日の停滞は自業自得なのかも。でも、これを知っていれば、どうすれば考えるの嫌いな人を買い叩けるか分かりやすいですよね。そんじゃねー。

 

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プロフィール

alphalifehacker

Author:alphalifehacker
  
腐ったこの国を買い叩くためハゲタカ阿修羅道に足を踏み入れた、元PEファンドのファンドマネージャー。更にその前は商社マン。

「お金を稼ぐことはいけないことでしょうか?」

いいえ、お金に罪はありません。ありません、が、数々のビジネスを経験してきた筆者のたどり着いた1つ答えは、富裕層と呼ばれるまでの財を成した人は例外なく”ワルい”ことをしているということ。

社会の裏側・お金と人間の悲喜こもごもをこの目で見てきた筆者の体験をもとに、エコノミック不良(ワル)と無辜な庶民はどこが違うのか、実生活に役立つ形に解釈し直し、発信して参ります。

このサイトに来ると少し賢く生きることができるかもしれない、アルファライフハッカーのブログです。

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