記事一覧

サラリーマンPE投資の可能性


先日知人から、サラリーマンPE投資のフィージビリティについて質問を受けたので、改めて筆者の考えをまとめてみたいと思います。



コンセプトとして、その業界に精通しある程度経営のスキルも備えているであろう大企業のサラリーマンがスモールビジネスにハンズオン投資を行うということは、なかなか面白いアイデアではないかと思います。

 

というのも、現代日本のビジネス環境を俯瞰すると、最も希少なリソースは資金ではなく優秀な経営人材であることは明白だからです。

 

高度成長期には、ビジネスアイデアがあっても資金の出し手がいないというシビアな環境がありましたが、今や政策金利はゼロに貼りついており、まともな会社で資金調達に窮するようなことはほとんどない言っていいでしょう。

 

他方、人口動態を眺めれば、経営者としてのボリュームゾーンである6070代の下の世代は絶対数が不足しており、空き家問題と同様、経営者不在問題は確実に発生すると考えられます。そしてその経営を引き継ぎ得るスキルセットを備えた人材は、頭数の絶対数以上に希少なはずで、今後深刻な人手不足に陥っていくだろうことは想像に難くありません。


 

事業承継Mtk  経営者動態
出所:日本M&Aセンター IR資料

 


日本の大企業は、相当な数の不要人材を抱えています。しかし筆者は、彼らの中には終身雇用システムの中でスポイルされて世界と競争できるようなスキルには欠けるものの、裁量と活躍の場を与えれば輝く人達が少なからず居るのでは推察しています。特に、グローバル競争が求められるわけではない内需型の産業については、従来不人気業種であったが故に人材の面から生産性が低くなっているところが数多く存在します。(飲食、医療介護、農業等)

 

こういうところに、大企業で飼い殺されている余剰人員が経営者としてオーナーシップを伴って移動していくことは、産業競争力の強化という意味で非常に大きい効果があるのではと考えています。

 

★★★

 

しかし、取引ボリュームが厚く、売買システムが定型化している不動産と違って、会社自体を売り買いするとなると、まだまだハードルが大きいのも事実です。筆者は大きく以下の3つがITサービス等によってクリアされれば、サラリーマンPE投資は現実味を帯びてくるのではないかと考えています。

 

ソーシング(案件発掘)

デューディリジェンス(DD)の定型化

ファイナンススキーム

 

 

1.ソーシングでのブレークスルー

 

不動産であれば、コンビニよりも多くある不動産屋に駆け込めば、それなりに案件の数自体は転がっていますが、会社となるとそうは行きません。

 

M&Aのブローカーとしては、日本M&AセンターM&Aキャピタルパートナーズが有名ですが、彼らの手数料の最低目線は2,000万円程度と言われており、手数料率が10%だとしても、2億円程度の取引サイズが必要とされます。これだと、少しサラリーマンが手を出すには大きすぎる印象です。

 

1億円未満の案件をシステマティックに仲介するプラットフォームとして有望なものが存在しないのが現状ですが、ビズリーチが始めたM&A仲介プラットフォームなどは、人的取引の及ばないマイクロM&Aにも光を当てる契機となるかもしれません。

 

こういうサイトを定期的にウォッチしておけば、そのうち面白そうな案件にも出会えるのではないかという感覚はありますが、固定客のついている近所の喫茶店などを買いたい場合、心を込めた手紙をしたためるのが、最も早くて有効な方法かもしれませんね。

 

なお、空き家になりそうな事業を買いに行くのが肝なので、バリュエーションに関しては基本タダ同然で手に入れることを念頭においており、この点では特殊なスキルが要らないことを前提としております。(Ex. せいぜい営業利益の1年分ぐらいが目線です)


スポンサーリンク

 

 

2.DDのブレークスルー

 

次に、投資サイズが大きかろうと小さかろうと、DDに掛かるコストはそんなに変わらないので、サラリーマンでPE投資を行うには、この部分で大幅に妥協せざるを得ないこともポイントだと思います。

 

ビジネスDDに関しては、ある程度サラリーマン時代の業界知識が生きることを前提とすれば、ビザスクなどのスポットコンサルティングなどを上手に活用することで、数十万円で終わらせることも可能かもしれません。(実際、マッキンゼーにDDレポートを依頼しても、やってることはビザスク使ってヒアリングした結果を綺麗にまとめているだけなので、材料としては同じです)

 

会計・税務に関しては、ある程度リスクを飲み込むしかないでしょうね。資金繰りだけはしっかり追っておけば、最低限はクリアでしょうか。ご自身にこの手の知識があれば有利だと思いますが、全くファイナンスの知識のない方の場合は、外部の業者を使ったところで使いこなせない気がしており、最低限ここの知識は必須だと思います。

 

最後に法務に関しては、M&A取引の定型ひな形みたいなものはネットに転がっているので、それを活用しながら、弁護士ドットコムなどでアドバイスを求めていく感じで何とかなりそうです。売主も大して法律知識がないので、厳し目のひな形で投げておけば、最低限困ることはないというセンスです。そもそも、個人取引なので補償を求めたところで回収できる見込みは低く、そこはバリュエーションで飲み込むという整理で乗り切るしかないでしょう。


 

3.ファイナンスのブレークスルー

 

この手の買収でノンリコースローン(会社のキャッシュフローを担保にした借入)は無理そうなので、個人保証を入れる前提でのファイナンスとならざるを得ませんし、DDの質の低さから言って、ノンリコースを望むべくもありません。

 

もっとも、バリュエーションの段階でタダ同然を狙っているので、レバレッジを効かせるのは買収後一定期間が経過してからでも良いのではないかと思います。

 

場合によっては、クラウドファンディング等で募集をかけるのもアリなような気がします。

 

 

★★★


筆者のように、企業買収を生業としている人間からすると、課題はあるものの割と何とかできそうな感覚はありますが、記事を書いていて思ったのは、やはり一通りはM&Aを経験したことのあるサラリーマンでないと流石に難しいかもしれない、ということです。しかしと言うべきか、だからこそと言うべきか、M&A仲介業者が2,000万円を超える平均年収になっていることを鑑みると、この領域はカネの匂いがする分野であるのは間違いなく、また稿を改めて検討してみたいと思っています。

 

そんじゃねー

 

 

スポンサードリンク

↓Twitterでフォロー↓

プロフィール

alphalifehacker

Author:alphalifehacker
  
腐ったこの国を買い叩くためハゲタカ阿修羅道に足を踏み入れた、元PEファンドのファンドマネージャー。更にその前は商社マン。

「お金を稼ぐことはいけないことでしょうか?」

いいえ、お金に罪はありません。ありません、が、数々のビジネスを経験してきた筆者のたどり着いた1つ答えは、富裕層と呼ばれるまでの財を成した人は例外なく”ワルい”ことをしているということ。

社会の裏側・お金と人間の悲喜こもごもをこの目で見てきた筆者の体験をもとに、エコノミック不良(ワル)と無辜な庶民はどこが違うのか、実生活に役立つ形に解釈し直し、発信して参ります。

このサイトに来ると少し賢く生きることができるかもしれない、アルファライフハッカーのブログです。

Current Tweets

Amazon Link